たとえ君の世界が色褪せても

 それに,世間的に見れば,私はきっと『問題児』なのだろう。十分に学校に行かず,ただスマホを見たり本を読んだりして暇をつぶすだけの毎日。

 そうすることに理由はあるけれど,やはり,『問題児』であることには変わりない。それに私は,家族の大切な人を自分勝手に奪った。

 それでもなお,声を掛けて,私の身を気遣ってくれる家族には,とても感謝している。

「おばあちゃんが,朝ごはんもうちょっと待ってだって。さっき覘いたら,だし巻き玉子もあったよ」
「ほんと! 嬉しいわぁ。お母さんの、じゅわっとしてるの、あれ、絶対真似できないのよぉ」
「美味しいよね。フワフワだし」


 そこまで話したところで、おばあちゃんが「遅くなってごめんねぇ」と言いながらお盆を持ってきた。


「ううん,全然。ありがと,いただきます」
 早速おばあちゃん特製のだし巻き卵に箸を伸ばす。

 ほかほかの卵焼きからは,絶妙なだしのコクと砂糖の甘さが噛むたびに口いっぱいに広がる。

 ゆっくりと咀嚼して飲み込み,一口,また一口と繰り返し,十分な時間をかけて一切れを食べた。

 だし巻き卵の余韻に浸りながら,お椀を手に取り,みそ汁を飲んだ。安定の甘い味噌は,弟の好きな味だ。

 その後も味噌汁,鮭のほぐし,ご飯,小松菜の和え物と順調に食べ進め,手を合わせた。
「ごちそうさまでした」

 流しにおいて水につけ,おばあちゃんに同じ言葉をかけると,お粗末でしたと返ってきた。

 部屋に戻り制服を着て,洗面所に行って歯磨きをする。

 そのまま洗面所で髪を結んでいると,弟の秀雨が目をこすりながら扉を開けた。


「雨美ちゃん,おはよ」
「おはよ」
「今日は学校行くの?」
「うん。頼都たちも一緒だよ」
 えっ,いいなぁと言った秀雨は「俺も一緒行っていい?」と尋ねてきた。