たとえ君の世界が色褪せても

 母は,高校教師として現役で働いている。科目は数学で,家で数学の勉強をするときは,母かお姉ちゃんに聞くようにしている。


「お母さん,おはよ」
「あ,おはよぉ。雨美,今日はどう?」


 どう,というのは中学校のことだ。私は週に二日ほどしか学校に行かない。
 今日行くかどうかは,幼馴染の須野(すの)頼都(らいと)と,髙田(たかだ)日葵(ひまり)の二人と昨日決めた。


「行くよ,朝から。今日は直接教室行くね。先生が,渡したいプリントもあるって」
「あら,そうなのね。大丈夫?」


 そう言った母の言葉に,うん。まぁ,と返す。


「頼都と日葵も一緒だから」
「そうねぇ,頑張って」
「ありがと」

 お母さんの間延びした声は,おばあちゃんに似ている。最近は,顔や背格好や声も似てきて,どことなく安心する。