サァァァァァアアアザアアアァァァァ……。


 優しい,だが,確かに脳に響く音で目覚める。

 雨がひたすら鳴り続ける,自然の音だ。今,外で雨が降っているわけではない。ただのスマホの目覚まし音。
 
 それでも,私はこの音を使い続けている。父と妹が死んだあの日を忘れず,刻み続けるために。


「雨美ぃー!朝よ~!」
  
 一階から聞こえるお母さんの言葉に「起きてる」とだけ返事をして,階段を下りる。
 顔を洗ってからリビングに入る。匂いが気になって,キッチンを(のぞ)く。


「おばあちゃん,おはよう」
「あぁ,雨美ちゃん。おはよう」

 
 私はおばあちゃんが大好きだ。ほんわかしてて,あったかくて,優しい。
 小林家の唯一の落ちこぼれである私なんかのことも,可愛がってくれてる。