生姜焼き定食は、玉ねぎがたっぷり入っていて、生姜がしっかり効いた大人の味だった。
付け合わせのサラダもシャキシャキで美味しいし、お米も何だかふっくらツヤツヤでいつも食べているものより何倍も美味しく感じた。
「おいしかったぁ」
あっという間に食べ終わり、おしぼりで口元を拭くと、「ごちそうさまでした」と両手を合わせた。
お腹いっぱい食べた余韻に浸っているとふと視線を感じ、菱田くんと目が合った。
「なに?」
「いや、別に。…行くか」
明らかに何か物申したげな顔をしていたけれど、はぐらかされた。
「何だよ。もう帰んのか」
坂井さんが厨房から出てきてレジ打ちをしている。
「修学旅行中だから」
「は?何だそれ。何で修学旅行中の奴らがこんなとこでメシ食ってんだよ」
「気分転換が大事なんだよ。な、委員長」
私は菱田くんを無視してもう一度「ごちそうさまでした」と言って頭をぺこっと下げた。
「いーえ。またいつでも来てね」
坂井さんの爽やかな笑顔にまた少し顔が熱くなった。
「じゃ、また来るわ」
菱田くんが軽く手を振り扉を開けたので、私も後に続いてお店を出た。



