「可愛い名前だね。彼氏いないの?誠志郎が狙ってないなら俺立候補しようかな」
その場にしゃがみテーブルに両腕を乗せて視線を合わせてくれた坂井さんにそんな事を言われ、私はついつい顔が熱くなった。
「生姜焼き定食の大盛り」
坂井さんの視界を遮るようにメニュー表を立てた菱田くんは、パタパタとおしぼりで顔を扇ぐ私の方を見ながらそう言った。
その視線が、“なに本気にしてんの?”と言われているようで、癇に障った。
「ふ。冗談だろ。本気にすんなよ誠志郎」
と、菱田くんの肩に手を置いて坂井さんは立ち上がった。
「…はぁ?俺じゃなくてコイツだろ」
分かってましたよ。リップサービスってことくらい。
「アジフライ定食と迷ってたけど…私も同じの!大盛りで」
私が鼻息荒くそう言うと、坂井さんは「あはは、了解」と笑った。



