バスに乗り5分程で飲食店や洋服屋さんが並ぶ商店街に着いた。
「こんなとこ来て、本当に大丈夫なの?」
私は菱田くんの背中に隠れるように歩く。
「メシ食って帰るだけだから」
時間帯的に、学生もちらほら歩いていて、制服姿の私たちを怪しむ視線は無さそうではあった。
暫くすると、迷うことなく1つの店の扉を開けた菱田くんに続いて私も店内に入った。
「いらっしゃいー、あれ、誠志郎じゃん」
「おっす」
お店に入るなり親しげに菱田くんに声をかけた店員らしき人は20代くらいの男性だった。
「何突っ立ってんの委員長。座れば?」
「え…あ、はい」
店の1番奥のテーブルに促されるまま座ると、さっきの店員が水とおしぼりを運んできた。
「お前が友達連れてくるなんて珍しいな。もしかして彼女?」
「違う。全然タイプじゃない」
菱田くんはメニューを見ながら平然とそう答えた。
本当に失礼な人だ。
私の不愉快な気持ちが顔に出ていたのか、店員さんが困ったように今度は私に喋りかけてきた。
「ごめんね。コイツ適当だから」
「ハハ…」
何て返せばいいのか迷い、愛想笑いで誤魔化した。
「俺はここの店長やってる坂井 洋平。よろしくね」
「えっと、宮原 飛香です。よろしくお願いします」
坂井さんは、背が高くて清潔感があって、エプロン姿が素敵で大人な雰囲気。
こういう大人の男性に免疫のない私はあまり目が合わせられなかった。



