「ま、待って!どこ行くつもり??怒られるんじゃ…」
「いいから早く」
菱田くんに引っ張られるまま、私たちは宿泊施設を抜け出した。
時刻は16時。
そろそろカレー作りが始まる時間だ。
先生たち、探してるよね。
警察沙汰になったらどうしよう。
「ぶっ」
なんて考えていたら突然笑い始めた菱田くんに、眉をひそめた。
「悪い悪い。すげー顔してたから」
セリフとは裏腹に、くくっとまだ笑いを誤魔化しているのがバレバレだ。
「だって、絶対怒られるし…下手したら停学、いや退学…」
「はいストップ。考えすぎ」
遮るように言われる。
「副委員長にさっき連絡しといたから」
「連絡?」
「宮原が腹痛いらしいから、カレー要らないって」
「えー…、私?」
自由すぎる行動に、もはや怒りを通り越して呆れてきた。
ご機嫌に私の前を歩く菱田くんに、なんだか反論するのも面倒くさくなってしまった。



