「菱田くん。私、あの日…出来心なんかじゃないよ」
ずっと、菱田くんから聞かないとと思っていた。
どうしてキスしたのか。
私のこと、どう思っているのか。
でも、聞くよりも、伝えることが大事なんだ。
「確かに、雰囲気に背中を押されたのは、そうなんだけど…
無かったことにには、したくない」
声は、少し震えたかもしれない。
選んだ言葉は、曖昧かもしれない。
けど、これが今の私の精一杯。
ゆっくりと体を離した菱田くん。
「俺、委員長のこと全然タイプじゃない」
「それ、前にも…」
「でも、可愛いと思ったから、キスした」
菱田くんは淡々と続ける。
「もっと近くで触れたいと思ったから、キスした」
「一緒にいたいと思ったからキスした」
どんどん熱くなる私の顔。
「や、やめてよ。そんな…連呼しないで」
私が下を向くと、ふっと笑った菱田くんはもう一度私を抱きしめた。



