菱田くんの姿を見て、私に声をかけた男の人はチッと舌打ちをして立ち去った。
「お前、何やってんの…マジで、焦った」
目の前まで来た菱田くんは、私の左手を掴むと息を切らしながらそう言った。
「菱田くん、やっと見つけた」
その言葉に、菱田くんは掴んでいた左手を引いてそのまま私を抱きしめた。
「…こっちのセリフなんだけど」
菱田くんは、うっすら汗ばんでいて、息も切らしている。
もしかして、私を探して走り回ってくれた…?
「菱田くん…」
「俺、宿泊施設に居たから」
「えっ?!」
「部屋で寝てた」
「なっ」
「戻ったら宮原が俺を探しに行ったって聞いて」
「……うん」
「めちゃくちゃ探した」
私を抱きしめる腕に力が入る。
菱田くんが、私を大事に思ってくれていることが伝わってきて、私はその背中にそっと手を回した。



