「ところでさ、キミたち昨日何かあった?」
ワクワクと期待の眼差しでコチラを見る巻くんに、何も言えない私と、何も言わない菱田くん。
シャケ、ご飯、卵焼き、お味噌汁…
順番にモグモグと食べ続ける菱田くんは何を考えているのか分からない。
「何かって…」
「飛香ちゃん昨日コイツの上着、俺に渡したじゃん」
巻くんが隣の菱田くんを親指で指差して言うと、菱田くんが私に視線を向けた。
“どうすんの?”
まるで私にそう言っているような、そんな視線。
「ひ………拾った」
やっちゃんが隣で、やれやれというような顔をしたのが分かった。
「拾った?菱田の上着を?」
巻くんが困惑して菱田くんの肩を叩く。
え?マジ?そんなことある?と、言いながら。
「ちょっと巻くん、デザート取りに行こうよ」
やっちゃんがそう言って巻くんを連れて席を立つと、残された私と菱田くんに流れる沈黙。
シャケ、ご飯、卵焼き、お味噌汁…
さっきと同じように箸を進める菱田くん。
聞かないと。
昨日のキスの意味を、ちゃんと聞かないと。
私が膝の上の手のひらをギュッと握りしめた時、先に口を開いたのは菱田くんだった。
「無かったことにしたいの?」
「…え?」



