修学旅行3日目。
ホテルの豪華な朝食バイキングも、あまり喉を通らない。
夜中まで起きていたからか、コンディションは最悪だ。
お米にするか、パンにするか。
簡単な2択すら決められない。
「米だろ、日本人は」
耳元から流れてきた聞き覚えのある声に、持っていたトレーを落としそうになる。
「ひっ…しだ、くん」
私は今日1番のスピードでパンを3つお皿に乗せると、そのままやっちゃんが待つテーブルに小走りで座った。
「どうしたの飛香」
「いや…菱田くんが、普通にしゃべってきた」
「ふっ、何それ」
結局深夜まで行われた作戦会議で決まったことは何ひとつ無くて、ただただ寝不足になっただけだった。
「おはー、やっちゃんさん飛香ちゃん」
ニコニコと朝から元気な巻くんが当たり前のように同じテーブルに座る。
そしていつの間にか、そんな呼び方になっている。
「おはよー。朝から元気だね」
やっちゃんがあくびをしながら言った。
「そ?2人は眠そうだな。あ、菱田!こっち座れば?」
私はパンをかじったままフリーズした。
巻くんが手招きをした先にいた菱田くんは何も言わずに私の目の前に座った。
私が飲み込んでしまったパンに咽せそうになってグレープフルーツジュースで流し込むと、やっちゃんが隣で私の背中をさすった。
「大丈夫?飛香」
「だ、大丈夫…」
と言いながらチラッと菱田くんに視線を向けると、わざとらしく舌を出してきた。
終始何事もなかったように振る舞う菱田くんにイライラする。
何なんだ。
私ばっかり意識して、ばかみたい。



