「あぁぁあぁ、どうしよう…」
キスをした。
はじめてのキス。
唇が離れて、菱田くんと目が合って、いたたまれなくて逃げるようにホテルに走った。
どうやって部屋まで戻ったんだっけ。
ロビーで巻くんと鉢合わせて、なんで菱田の服着てんの?って言われ慌てて巻くんに押し付けるように上着を渡したのは覚えている。
「飛香ってば。言ってるそばから何やってんだか」
やっちゃんがベッドの上で念入りにスキンケアをしながら言った。
「やっちゃん、私もう帰りたい。明日からどうしよう…」
「どうしようって言ってもね〜」
人ごとのように言うやっちゃん。実際、人ごとなんだけど。
「雰囲気にのまれて、する?普通」
「…だって、」
あれはもう、するしかないよ。
うん。
それ以外の選択肢、ないよ。
と、自分に言い聞かせてみるけど、モヤモヤと後悔は消えない。
それから、あーだこーだやっちゃんに説教されつつ、明日からの行動を深夜になるまで作戦会議をした。



