修学旅行からはじまる恋の話




水族館に併設されたレストランでお昼ご飯を食べ終えた私たちは、次の目的地である浅草寺へと向かった。



仲見世通りは日本文化が詰まったお土産やグルメを楽しむことができ、賑やかなお店に後ろ髪を引かれながらも、まずは参拝をするため人混みに揉まれながらその先にある本堂へと足を進める。



本堂の手前で、常香炉と呼ばれるモクモクと舞い上がる煙を浴びているとフラフラと菱田くんがどこかへ行くのが見えて、慌てて紐を掴んだ。

「菱田くん、どこ行くの?」

「…トイレ。一緒に来る?」

ニヤリと笑って言った菱田くんに「ちゃんと戻ってきてよ」と紐を離し、少しだけ疑いの眼差しを送りながらも菱田くんを見送った。


それから3人で本堂でお参りを済ませると、しばらくして戻ってきた菱田くん。


その姿を見てホッとした私が「おかえり」と右手を上げると、目の前まできた菱田くんは、じっと視線を送ったあとに突然私の頭に顔を近づけた。



「燻されてんね」

「っな、」


咄嗟に離れて髪の毛と制服を手で払う。

煙の匂いってこんなにすぐにまとわり付くのか。

そんな私を見てケラケラと笑う菱田くんを睨みながら思う。



紐を付けて牽制したけれど、今日1日、彼は特に逃げる様子はなかった。

大人しく着いてきてるし、何だかんだ楽しそう。