修学旅行からはじまる恋の話






「なんだこれ」



翌日の朝。
一応ちゃんと集合場所に現れた菱田くんに、私はすぐさま駆け寄ってある細工をした。


隣で見ていたやっちゃんも、「飛香…さすがにソレはどうかと思うよ」と半ば呆れ気味だ。


「しょうがないよ。菱田くんが消えるたびに探し回ってたら時間の無駄だし!これなら手綱になる!」


私は、先生に頼んで借りてきた長めの紐を菱田くんのリュックに結んだ。



「先端は咄嗟に握りやすいように輪っかにしておいたよ」


「犬じゃねぇんだから、やめろ!ピロピロ鬱陶しい」


キレ気味に紐を外そうとする菱田くん。

私はその手を掴んで言った。


「お願い!修学旅行なんだよ!楽しみにしてたの!いつも迷惑かけられてるんだから…今日くらい大人しくしててよっ」

懇願する私を見下ろした菱田くんは、一瞬考え「分かったよ」と私の手を振り解くと、そっぽを向いた。



そんな菱田くんの姿を見た私は心の中でガッツポーズをし、じゃあこれも付けておくねと自分のカバンにつけていたキーホルダーを菱田くんのリュックに結んだ紐にくっつけた。


クマの形をした皮製のキーホルダー。
隣の大きな鈴がチリンとなる。






「はぁ?鈴?…ふざけんな!」




背後で怒っている菱田くんを置いて、私はやっちゃんと笑いながら逃げるようにバスに乗り込んだ。




楽しい楽しい修学旅行2日目。



一体どんな1日になるんだろう。