「それ、半分持とっか?」


 そう言って、ペットボトルを四本抱えたままのわたしに向かって、宮部くんが手を差し出した。

 そういう気遣いのひとつひとつに、思わず胸が高鳴る。


「ううん、このくらい大丈夫」

「そ」


 フロント係が奥の部屋から声をかけられ、席を外した瞬間——。

「よしっ、走るぞ」

 宮部くんが小声で囁くと、ばっと走り出した。

 そんな宮部くんに続いて走り出すわたし。


 ……なのに、なんでこんなときに!?

 なにかにつまずいて、間一髪転倒は免れたものの、バラバラバラっと四本のペットボトルが床を転がった。

 チラッとフロントの方を見てみたけど、まだ幸い係の人は戻ってきていないみたい。

 わたしの異変に気づいた宮部くんが戻ってくると、ささっとペットボトルを拾い上げ——わたしの右手を掴んだ。

 宮部くんが、口元に人差し指を当て、目だけで『行ける?』と聞いてくる。

 わたしがこくこくとうなずくと、宮部くんはニッと笑ってからわたしの手を引いてもう一度走り出した。