翌朝。
駅で合流した詠に昨夜の出来事を話す。
「そっかぁ、やっぱりおばさんが持ってたんだね」
「……ん」
「でもよかったね。ネックレス、直して貰えるんでしょ?」
「うん」
ジュエリーボックスの中には、ヘアピンやブレスレットの他に、見知らぬ鍵が入っていた。
もしかすると、彼と私が住む予定というあのマンションの鍵かもしれない。
それと、壊れたスマホも入っていた。
「これ、復元できると思う?」
「うーん、どうだろう。結構お金かかりそうだけど、データだけ取り出すとかならできんじゃない?」
彼との想い出が詰まってると思われる壊れたスマホ。
それにも血が沢山付いていて、さすがにそれを詠ちゃんに見せれないから、昨夜ウェットティッシュで拭いたんだけど。
「小春は思い出したいの?思い出したいけど、怖いから思い出すまで流れに任せたいとか?」
「……少し前までは流れに任せたいと思ってたんだけど、最近は思い出したいかな。知らないことにモヤモヤするの、もう疲れちゃって」
「そうだよね。小春の性格なら、気になり始めたら、答えが出ないと落ち着かないもんね」
満員電車に揺られ、無心を装うとしても、脳裏に浮かぶのは彼の切ない横顔。
最近、不安そうな憂いた顔をよく見ている気がして。
私がそうさせている原因なんだろうけど。
笑顔にしたいとかではないけれど、せめて私が原因で悩んで欲しくなくて。
「今日、帰りに付き合ってくれる?」
「いいよ~」
スマホの中身を見たら、少しは役に立ちそうで。
失ったものを一つでも多く取り戻さないと、彼に顔向けできなくなりそうで怖い。



