球技大会を数日後に控えた、とある日の放課後。
一年C組の生徒たちは、西門前に用意されたバス三台に乗り分け、練習場所へと向かう。
バスケやバレーに出場するメンバーは、市立体育館へと。
サッカーに出場するメンバーは、河川敷のサッカー場へ。
ソフトとドッジに出場するメンバーは、総合運動公園へと。
桐生組がLHRで話し合ったあの日、向こう一カ月のスケジュールを完璧に押さえたのだ。
既に予定が入っていて借りられない日は、別の施設を確保するなどして手抜かりはない。
授業終わりの生徒たちをマイクロバスで移動させるといった徹底ぶり。
他のクラスの人達にバレないように、普段使われない西門を使うというのも仁の作戦だ。
もちろん、運転手は桐生組の組員。
ちゃんと担任が学校側に掛け合い、事故や怪我がないようにと細心の注意を払うというルールで。
一年C組の生徒には時間や場所、練習種目のスケジューリングが配布されていて、もちろん強制ではない。
バイトやデートなど個人の都合で来れない場合は、メンバー同士で情報を共有するという暗黙のルールがある。
そして、移動だけでなく、練習場所でのエネルギーチャージにと、飲み物や軽食といったサポートも完璧なのだ。
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「園田、ドリブルがすっげぇ上手くなったじゃん」
「あっ、……アドバイスのお陰です」
普段運動とは無縁だった園田。
体育の成績は常に赤点ギリギリといった感じで、クラスに馴染めずいつも教室の隅に一人でいるような子。
けれど、仁はそんな園田でも決して見捨てず、根気よく声をかけ続けた。
『経験値が少ないだけで、ボールと自身の距離感が掴めればドリブルくらい簡単だ』とアドバイスし、足に当てる位置や走る時の呼吸の仕方など、仁なりに細かくレクチャーした。



