姐さんって、呼ばないで



球技大会を二週間後に控えた、とある日。

「兄貴」
「おぅ、どうした」
「和田が、今日バイトで夕方の練習出れないそうです」
「すみません…」
「おっ、そうか。そんな謝ることでもないだろ」
「さすが、兄貴っ。そう言うと思って、俺ら、昼休みに体育館の半面、使用許可得て来たんですよ」
「岡田、気が利くじゃねぇか」

すっかりクラスのムードメーカーになりつつある仁と鉄。
けれど、ハンパないオーラのせいで、未だに直接話しかけれない生徒がいるもの確か。
そんな生徒たちの潤滑油として、岡田や詠がいる。

「バレーチームの人~。今日の昼休み、体育館で練習するから、来れる人は体育館に集合な~!それと、暇な人いたら練習付き合って~」

岡田はクラス中に聞こえるように声を張る。

「岡田、……ありがと」
「どいたま~。俺バスケだけど暇だから、昼休み付き合うよ」



「いいか?守りが完璧じゃないのに、攻撃しても意味がねぇ。いつ攻めて来るかも分からない戦で守りが脆弱だったら、気が散漫になって攻めれるもんも攻めれねぇ。スパイクができる奴は二人いれば十分。残りの奴は徹底的にレシーブを強化しろ。どんな球でも拾うことさえできれば、勝機が見える」
「「「はい」」」

仁はコートの隅や手薄な場所を狙って次々とボール出しする。

倉田(くらた)ぁ~っ、ボールをよく見ろ!お前なら拾えるっ!」

仁は頭ごなしに言うだけではない。
励まし、鼓舞して、その気にさせるのも神がかっている。