「よくある話ですよ。こういう全学年のイベなんて、三年に花もたせるってどこの学校でも慣行みたいなもんですよ」
やるだけ無駄だと言わんばかりの身振り手振りをする水上。
「おい、最上」
「“先生”……先生くらい付けなさいよ」
「んなことはどーでもいい。今アイツが言ったことは本当なのか?慣行だかなんだか知らねぇが、学校っていう表社会で闇取引みたいなこと、マジでしてんのか?」
仁の『表社会』『闇取引』という言葉に、クラス中の視線が仁と担任の最上に向けられる。
「教師としての答えを求めるなら『NO』。そんな決まり、あるわけないでしょ」
「んだよっ」
「けどね、数か月前に顔見知った一年に比べたら、丸二年以上苦楽を共にして来た仲間意識のある三年が有利なのは本当よ。お互いの実力も分かっていて、信頼関係もある。団体競技なんて、団結力が一番の鍵だからね。幾ら個人のポテンシャルが高くても、そのスタート時点でハンデがあるようなもんなのは事実だわ」
「面白れぇ」
最上の話を聞いた仁は、俄然やる気が出たようだ。
バキバキと指を鳴らし、立ち上がった。
「やるか、やられるかなら、やるに決まってんだろっ。うちのクラスは桐生組が全面協力してやる!」
「全面協力って?」
仁を兄貴と慕う岡田が喰いついて来た。
「今日から大会当日まで、練習場所はもちろんのこと、差し入れも全面バックアップする。優勝したら、うちが贔屓にしてる店で焼肉でも寿司でも、食い放題で幾らでも食わしてやる」
「マジっすか?!!」
「えぇ~っ、焼肉食べ放題?!」
「それって高級国産黒毛和牛とかっすか?!」
「寿司って回ってない寿司ですよね??」
「ったりめーだろッ」
「俺、やります!元々運動好きだし!」
「おぅ。経験・未経験は関係ねぇ。俺が付いてんだ、負け戦なんてありえねぇっ!」



