「あっっっちぃ~~ッ」
「何か、買って来ましょうか?」
「ん?……あ、いい」
小春を一人で買いに行かせることも、俺が買いに出て、彼女を一人にさせることも心配だ。
着ているラッシュガードを脱ぎ、団扇で気休めの風を送る。
「誰かしら帰って来たら、冷たいもんでも買いに行こう」
「……はい」
ビーチパラソルの下。
海風があるとはいえ、気温三十度を超える浜辺は照り返しが強く、蒸し暑い。
小春には鉄が持参したハンディタイプの扇風機を渡してあるが、周りの気温が上がるにつれ、もわっとした風しか送られてこない。
「海まで来たんだから、真っ黒に焼けて帰るか」
「え?」
「この陽ざしじゃ、短時間で焼けそうじゃね?」
「あ、はい、そうですね」
シートの上にゴロンと横になる。
中途半端に日焼けしててもカッコ悪い。
男なら潔く、真っ黒に焼いた方がいい。
そんな俺に、俺が手にしていた団扇で風を送ってくれる。
こういうさりげない優しさは何一つ変わってない。
「仁さん」
「……ん?」
「詠ちゃんに頼もうと思ってたんですけど、すっかり忘れてしまって」
うつ伏せ状態の顔を横に振り、視線を合わせると。
俺の視線の先に恥ずかしそうに差し出して来た物が。
えっと、これは俺にしてくれという意味か?
……だよな。
「貸してみ」
「っ……ごめんなさい」
着ているラッシュガードを脱ぎ、チェック柄のビキニ姿がお目見えした。
俺に背中を向け、恥ずかしそうに背を丸める小春。
一年ぶりに見た彼女の水着姿は、眩しいほどに綺麗だ。



