姐さんって、呼ばないで



翌朝。
早々に朝食を済ませ、一行は海へと繰り出した。

「一通り遊んだら、スイカ割りすんぞ」
「うぉぉお~~っ!!スイカなんて、どこで手に入れたんですか?!」
「昨日持って来てて、旅館で一晩冷やして貰っておいたから」
「マジですかっ?!さすが、兄貴!!」

昨日サーフィンを教わって、すっかり仁に懐いた岡田。
仁の周りをうろちょろしている。

「てめぇ、何っ勝手に『兄貴』とか口走ってんだよっ!」
「俺、分かったんですよね!兄貴も鉄さんも、口では強気なこと言ってるけど、絶対俺らを困らせるようなことしないって」
「っ……買い被りなんだよっ」
「いや、ぜってぇそうだって!だから俺、極道とかそういうの、マジでもう考えるの止めたんですっ!」

瞳をキラキラと輝かせ、鉄に抱きつく岡田。

俺らの本当の姿を知らないから、そういうことが言えるんだ。
俺ら(極道)はカタギじゃない。
だから、世の中の汚い部分をこれでもかというくらい見て来た。

汚い手で弱い者いじめをするみたいにつけ入る奴らを力技で捻じ伏せて来たのも事実。
岡田が思い描くヒーローなんかじゃない。

「昨日、海に入ってないですよね?私、ここの番してるので、少しでも入って来て下さい」
「あっ、いえ、姐さん。うちらはこれが仕事なんですっ」
「そう言わずに。……ね?」

曲がったことが嫌いな小春。
雑用係として連れて来たテカに気を遣い始めた。

まぁ、見てみぬふりできる性格じゃないし。
例えそれが、見知らぬ相手でも態度を変えることはないだろう。

「お前ら、入って来ていいぞ」
「はい?」
「ここは俺と小春で見てるから、鉄らと楽しんで来い」
「いいんすか?」
「あぁ」
「「「あざっす!!」」」