姐さんって、呼ばないで


Ka() mate(マテ) ,Ka() mate(マテ)!」

大広間に響く喉太の声。
ラグビーのニュージーランド代表(オールブラックス)が自分たちを鼓舞するために試合前に行うパフォーマンスのハカである。

Ka() ora(オラ),Ka() ora(オラ)!」

肩幅よりやや広めに足を開いて中腰の彼ら。
気合を入れ、全身の隅々まで呼び掛けるかの如く、筋肉を見せつけるように。

「俺、これテレビで観た!ラグビーのワールドカップで!!」
「あ~っ、私も観たよっ!観客も凄い熱狂するやつだよね?!」
「そうそう、それそれ」

掴みはOKらしい。
組の忘年会などの余興でも結構ウケてて、鉄が直々にレクチャーした。

貸切りになっているから出来ること。
大柄の男たちが大声で暴れたら、さすがの桐生組でもバツが悪い。

世間一般的に言われている極道とうちは基本スタイルが違う。
うちの組は、カタギの人達と肩を並べて共に歩む道を模索しているのだから。

テカたちのハカが終わり、次は鉄がマジックを披露し始める。
これもうちの組では結構お馴染みで、手先の器用な鉄は、毎年新ネタを増やしているくらい、余興にも全力投球だ。

「うっわぁ!何が起こったんですか?!全然分かんない!!」
「えぇ~っ、オレンジは一体どこから出て来たの??」

自分の席からでは分からないからと、少しずつ前に移動するクラスメイト。
そんな興奮する彼らに気をよくしたのか、鉄は次々とマジックを披露する。

小春も手を叩きながら、目を輝かせている。

「楽しめてるか?」
「はいっ、もちろん!」