額に冷たいアイスが当てられ驚いたが、味の濃いお好み焼きを食べて、ちょっぴり口の中をさっぱりさせたかったのもある。
仁が買って来たのは、レモンシャーベットのアイス。
たぶん、正門前の商店で買って来たのだろう。
「ほらね?私もいるって分かってるのに、私の分は無いもん。完全に小春ちゃんしか眼中にないよ」
「っっ……」
クスクスっと笑う美路ちゃん。
ついさっきの会話を思い出し、顔が火照る。
アイスの袋で頬の火照りを冷ましていると。
「菊川さん、……だったよな?」
「はいっ」
「姐さんの護衛の、礼っす。よかったら…」
「え、いいんですか?」
「見せびらかして食うほど、俺ら鬼畜じゃねーよ」
にかっと笑う鉄さんは、美路ちゃんに私と同じアイスを手渡した。
「兄貴~、弦さんからメールが来てるっす」
「何だって?」
ベランダへと出る二人。
仕事の連絡でも来たのかな?
「小春ちゃん、どうしよう。これ、永久保存できないかな~」
「食べないと溶けるよ」
「だってぇ、初めてのプレゼントだよ~」
「美路ちゃんって可愛いね」
「え?」
袋からアイスを取り出す。
もしかしなくても、覚えてくれてたのかな。
私が『レモン好き』なのを。
甘ったるいものより、甘さ控えめな方が好きな小春。
ケーキも甘さ控えめで季節の旬なフルーツがふんだんに使われているル・クレールのケーキが好き。
生まれた時から一緒に過ごして来たのだから、当然なのかもしれないけれど。
私は彼とのそんな思い出も忘れてしまっている。
だけど、今日という日の、この優しい甘さはきっと忘れない。