「勉強も運動もできるし、その上あの容姿だよ。小春ちゃんが彼女じゃなかったら、絶対女の子が放っておかないよね」
「……そうなのかな」
「そうだよ!あ、でも、当の本人は小春ちゃんにベタ惚れだから、他の女子は眼中にないか」
「そんな風に見えるの?」
「見える見える!!小春ちゃん以外には素っ気ないし、会話すらして貰えないし。まぁ、そういうところも魅力的だって言ってる子も多いけどね」

美路ちゃんの言葉に照れくさくなる。
失っている記憶が少しずつ思い出して来ている中。
客観的な他者の意見は、小春には新鮮に感じられた。

「あ~、私も彼氏欲しいなぁ~」
「どんな人がタイプなの?」
「そ~だな~、手嶋さんみたいな人」
「鉄さん?」
「パッと見、強面だから近づき難いけど、明るいし人懐っこいし、何より私、マッチョな人好きなんだよね♪」

ウフッと微笑む美路ちゃん。
乙女のような仕草に、小春は可愛いと思ってしまった。

「鉄さんに、彼女いるのか聞いておこうか?」
「えっ?!いいの??」
「聞くだけだよ?」
「うんうん!!友達でもいい!!今よりもっと話ができたら、それで満足!」

嬉しそうにする美路ちゃんが、少しでも幸せになってくれたらいいなぁ。

「桐生組の人って、イケメンが多いの?」
「どうだろう?……比較的、細マッチョな人は多いかも」
「え~っ、なにそれ!見たーい♪」
「フフフッ」

その後も美路ちゃんと他愛ない会話をしていた、その時。

「ひゃっ…」
「土産だ」
「え、アイス?」
「あっちぃから、買って来た」
「……ありがとうございます」