「そう言えば、さっき安と何を話してたんだ?」
「やす……さん?」
「あっ、そうだったな。安と言われても鉄以外分からないよな。赤い髪の奴がいただろ」
「……あぁ、はい。彼が安さんって言うんですね」
「ん、安広だから、安」
「安広さんですね、覚えておきます」
「で?何の話を?」
もしかして、嫉妬?
詠ちゃんが言ってたもんね。
独占欲が強めだって。
「特別変わったことは何も話してないですよ?」
「だから、どんな話?」
「……」
やっぱり食い下がって来る。
そんなに気になるのかな。
それとも、他の男性と話してるのが気に入らないとか?
「気になります?」
「あ?」
「私が他の男の人と話してるのが」
「っ……、べ、別に」
やっぱりそうだ。
そっぽを向いてしまったけれど、照れているのが見て取れる。
「『相変わらず可愛いですね』って言われました。まぁ、社交辞令でしょうけど」
「はぁぁああっ?!!」
「そ、そんなに驚くことじゃ…」
「っざけた真似しやがってッ!海に沈めるか」
「えええっ」
バキバキッと指を鳴らし、一瞬で目がすわった。
やはり、極道の人だ。
『海に沈める』って、普通嫉妬しても、そういう発想にはならないでしょ。
豹変する彼には驚くけれど、でもちょっぴり嬉しい。
こんな風に一途に想われたら、嫌な気分になるはずがない。
「そろそろ時間だな」
「へ?」
「遅くならないうちに送ってく」
スマホを見ると、二十二時になろうとしている。
やっと少し距離が近づけた気がしたのに、ちょっと名残惜しいような。
「また、来てもいいですか?」
「ッ?!……もちろん、いいよ」
私の言葉が意外だったのか。
はにかんだ顔にきゅんとしてしまった。