「ちゃんとしたことは聞いてないけど、たぶんしてたんじゃないかな?」
「え゛っ……」
「まっ、うちら中学生だったし、三歳も年上とはいえ、彼はちゃんと小春を大事にしてたから、想像してるような凄いことまではしてなかったと思うけど」
「え~っ、どっちなの~」
「だから、その中間あたり?」
「中間?」
「そそ、チュー感?」
「………ッ?!!」
詠ちゃんのキス待ち顔にドキッとしてしまった。
今までも色んなことを話して来たはずなのに、何でだろう。
初めて詠ちゃんに告白してるみたいな気分になる。
「知りたかったら、仁さんに聞けばいいじゃん」
「は?」
「私たち、どこまで進んでますか?って」
「なっ……そんなことっ、聞けるわけないじゃん!」
「そぉ?仁さんなら、嬉しがって教えてくれそうだけど」
「………」
「極道って言ってもさ、小春の中では彼は若頭の仁さんじゃなくて、一人の男性として仁さんを見てたと思うよ」
「……」
「小春が仁さんの話をする時って、いつも他愛ない愚痴みたいな話ばっかりだったし。極道の人っていう風に、小春の話からは感じなかったから」
「……そうなんだ」
確かに、彼が芸能人だろうが、極道の人だろうが、気にしない性格だ。
人の生死にかかわる仕事である医者をしている両親に育てられ、人間の尊厳を大切にするように教わった。
だから、見た目や境遇でその人を判断したりしない。
「ちょうど仁さんから連絡が来てるんだから、いい機会じゃない。会って来たら?」
「………う、うん」
「仁さん、あまりスイーツは食べない人だけどさ、イチゴなら食べると思う」
「イチゴ?」
「私が買って来たお土産」
「あ……」
「それ持って行って来な」
「……ん」



