超ラブラブな恋人同士でいたのなら、彼の浮気が原因で、精神的ショックで一時的に記憶障害になるケースもあるらしい。
自分の中で現実が受け入れられなくて、精神的に滅入ってしまうパターンだ。
「それはないでしょ。あんなに一途な人、滅多にいないよ。するとしたら、小春の方じゃないかな」
「え?」
「あ、もしもの話ね?」
「……」
「それくらい、仁さんは小春一筋だよ」
確かに学校での彼の態度を見てたら、そうだったのかな?とは思うけれど。
だけど、どうしても腑に落ちない。
「私一筋だったとしても、わざわざ入学してまで高校に通う理由があるのかな…」
「う~ん、……私が聞いてるのは、『小春の傍にいたい』って理由だけど」
「傍にいたい、ねぇ…」
記憶を失った私との接点がなくなり、毎日のように逢っていた二人が同じように逢えるのが『学校』というのは理解できる。
けれど、幾らベタ惚れの彼女と毎日のように逢いたいからと、周りの目も気にせず入学までするだろうか。
『極道』というだけでも注目の的だし、『桐生組』だと知られれば、それこそかっこうの餌食になりかねないのに。
それを承知で、あえて入学したとなると、それにはそれ相応の理由があるように思えて。
ピコン。
「噂をすれば何とやらだね」
「……ん」
彼からメールが送られて来た。
「何て?」
「……今夜、時間あるか?だって」
「おぉっ!デートの誘いじゃない?」
「デート?」
「そそ、デート♪二人で食事をするとか、映画を観るとかでもいいしさ。ちょっと話してみたら?そんなに気になってるんなら」
「……気になってるというか」
「なってるでしょ?小春が耳朶触る時は、悩んでる時だもん」
「っっ……」



