世界史の三上教諭の叫び声が響く中、彼らが飛び降りたのを見ていた生徒たちが一斉にベランダへと。
けれど、既に彼らは南棟の通用口のドア部分に差し掛かっていて、あっという間に姿が見えなくなった。
「小春っ、仁さんたち、マジでヤバいね」
「……怪我しなかったかな」
「大丈夫でしょ。普段はもっと凄いことしてると思うし」
「………」
彼らがいなくなった教室は騒然としていて、『すげぇ~』『マジで惚れるっ』『桐生さん、カッコいい~』というような言葉が飛び交い始めた。
確かに桐生さんはカッコいい。
鉄二さんも少し強面だけれど、クシャっとした笑顔は可愛いし、何より桐生さんといると素直で優しい。
桐生さんの容姿は、息を呑むほど美しいという言葉がマッチするほど、本当に美男子だ。
野獣っぽい鉄二さんと超絶美形の王子様の桐生さん。
二人とも長身で『極道』でなければ、周りに女子を侍らせていてもおかしくない。
威圧感というのか、独特のオーラのようなものがあるから、近寄りがたいけれど。
言動は極道そのものでも、実際は極道を封印している二人に、密かに人気が出始めている。
「仁さんたち、買えたかな……?」
「……どうだろう。別に買えなくても、がっかりするのは止めようね?」
「あ~、ハイハイ」
記憶のあるないにかかわらず、人として好意でして貰ったことに対し、落胆するような態度は失礼に値する。
小春は無意識に机を四つ合わせ、彼らの分の席も用意する。
そんな小春を眺め、詠はクスっと笑みを浮かべた。



