どんぶりと箸が片付けられ、周りにいるみんなは撮影した写真や動画をチェックし始めた、その時。
羽織の中に隠れている私の左手がぎゅっと掴まれた。
「……え」
「褒美だ」
羽織りから顔を出した彼は、髪を指先で整えながらはにかんだ。
恐る恐る視線を落とす。
そこには、ネックレスとお揃いとも思えるピンクダイヤの指輪が。
これって、もしかして……婚約指輪?
「仁くん、……貰っていいの?」
「は?……小春以外にやる奴いねぇよ」
「……ありがと」
二人羽織りでうどんの一気食いなんて、羞恥の極みだったけれど。
こんなにも素敵なご褒美が貰えるなら、もう一杯くらい余裕で食べれる♪
「あっ、姐さん、いい表情っす」
「へ?」
羽織りを脱いだ彼の膝の上で、左手薬指におさまる指輪を愛でる私を、ここぞとばかりにシャッターが切られる。
「もうっ、勘弁して!」
「その辺にしといてやれ」
「うぃーっす」
「安、あとで俺のスマホに送っといて」
「へい」
こういう所が抜け目がない。
けれど、大事にされてると伝わるから。
今日も仕方ないかと、甘やかしてしまう。
いつか、ぎゃふんと言わせたいなぁ。
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翌朝、詠ちゃんと駅で待ち合わせして登校すると。
「「姐さんっ!」」
D組の男子に“姐さん”呼ばわりされた。
「小春、知り合いなの?」
「隣のクラスだから、顔とかは知ってるけど、話したことないよ?」
玄関から教室へと向かう間にも、すれ違う人たちがドミノ倒しのようにお辞儀までして挨拶して来る。
それも、私に向かって“姐さん”と。
「小春ちゃ~~んっ!!」
教室に入ると同時に、美路ちゃんが駆け寄って来た。



