姐さんって、呼ばないで


「おいっ、誰が天丼出せって言った」
「え?……今さっき天ぷらって…」
「俺はブツを出せって言ったんだよっ!抜かした真似してっと、マジでしばくぞ、ゴラァッ」
「………」

二人の言いたいことが全く通じていない。
購買のカウンターはL字型しており、既に生徒が数人いる。
仁と鉄二に気付いた他の生徒らが、明らかに動揺してそそくさとその場を去る。

「おばちゃ~んっ、バナナプリンまだある?!」

仁たちよりも一足遅れてやって来た男子生徒が別の職員に声をかけた。

「ごめんね~、今日の分はもう終わっちゃったんだよね~」
「マジかぁぁ~」

がっくりと項垂れるその男子生徒と職員のやり取りを聞いた仁と鉄二の顔が一変した。

「バナナプリン、……もう無いのか?」
「あぁ、バナナプリン?あれはすぐ売れ切れちゃうからね~」
「………」

四限目が終了して、ものの一分ほど。
フライング気味に教室を飛び出したのにもかかわらず、買えないとは……。

「兄貴」

鉄二が声をかけるが、仁は軽く放心状態。
栗原が言ってたように『伝説』と崇められることを身をもって実感した。

「いつもこんなに早く売れ切れんのか?」
「う~ん、そうだね~、ここは十五分前くらいから開けてるから、授業が早くに終わった子達が買ってるイメージがあるね~」
アコギ(卑劣)シノギ(商売)だな」
「あっ、ほら、あそこにいる子達が持ってるのがそうだよ」
「ッ?!」

仁は指差す方へと視線を向けると、自慢げに手にしている男子二人組を捉えた。

「兄貴っ、あいつらから」
「アホんだらっ、んなことできるかっ!」
「ですが…」
「惚れた女への上納品(贈り物)に、己のタマ(真心)込めな、男が(すた)る」
「そ、そっすよね」