姐さんって、呼ばないで


自分だけ知らされてなかったことが悔しくて。
ちょっとだけ仁くんに八つ当たり。

「可愛いな」
「…っ」
「……服が」
「はぁ?」
「フフッ、冗談」
「もうっ!」

プイっと顔を背けると、耳元に顔がグッと近づいた。

「俺も準備して来る。いい子にしてろよ」
「なっ…」

クククッと笑いを堪えながら、彼は二階へと上がって行った。

「みんなで食事するだけなのに、わざわざ着替えなくてもいいのに」

すでに制服ではなく、仕事をして来たのか。
Yシャツにネクタイ姿だった彼。

久しぶりに勢揃いするからかな。
パパもママもお洒落な格好だし、ちょっとテンションが上がる。

奥座敷の大広間へと行こうとすると、安さんが駆け寄って来た。

「姐さん、こっちです」
「え?」
「とりあえず、こっちに通すように言われてるんで」
「……そうなの?」

奥座敷へと行く手前の廊下を右に曲がった客間へと案内された。

「小春ちゃん、いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「いらっしゃい」

客間には両親と一緒に、既に仁くんのご両親がいた。

「今日はお着物なんですね。凄く綺麗な柄」
「ありがとう。久しぶりに顔合わせるから、写真でも撮ろうってことになって」
「……なるほど、それでなんですね」

今までも何度かあった。
みんなが揃う時に、集合写真のように記念撮影をして。

組の人たちは写真をあまり好まないんだけど、こういう時は別物らしくて。
組長の一声でみんな勢揃いする。

私のために、パパさんとママさんが気遣いしてくれたことが何よりも嬉しい。