「えっ、……ご馳走って、ここ、仁くん家だよ?」
「そうよ♪今日はお夕食に招かれてるの」
「は?」
父親の車で到着したのは、桐生組の本宅。
しかも、正門前に堂々と横付け。
ずらりと強面の組員が横並びに出迎えていて、思わず隣りに座る母親の顔を見てしまった。
「小春のお誕生会をして下さるって言うから、お言葉に甘えることにしたの」
「したのって……」
今日学校で仁くんからは何も聞かされてない。
鉄さんからも何も言われてなくて。
私にだけ内緒にしてたんだ。
私の誕生日のお祝いだから?
後部座席のドアが外から開けられ、『姐さんっ!!』と地響きが起りそうな声が響く。
「こんばんは」
「「「ようこそ」」」
母親が挨拶すると、相変わらず一糸乱れぬ掛け声に思わずハッと聴き入ってしまう。
練習でもしてるのかな。
「姐さん、こちらへ」
赤髪がトレードマークの安さんが、玄関の方へと案内する。
両親と共に正門をくぐった。
*
「小春」
「仁くん!ちょっと、聞いてないんだけど」
「ごめん」
長廊下を曲がった先で、仁くんと遭遇した。
「ママたち、先に行ってるわね」
「あ、うん」
宴会をするのはいつも奥座敷の大広間。
両親は案内係の安さんに連れられ、奥へと進む。
去年は記憶を失っていたから無かったけれど、毎年のように年に数回、こうして宴を開いてくれる。
すっかり忘れていたけれど、こんな風に両家で食事を何度もしたっけ。
「怒ってるのか?」
「だったら?おねだり聞いてくれるの?」
「……フッ、ねだりたいことでもあんのか?」
「さぁ、どうだろ」



