姐さんって、呼ばないで



一月下旬。
日本列島に大寒波が押し寄せ、連日底冷えが厳しい季節。

学校は開校記念日で休校になっていて、久しぶりの平日休みを栗原と菊川とテーマパークに出掛けて過ごすという小春。
もちろん、護衛を手厚く配置させ、逐一報告を入れさせるという段取りは完璧。

一応、念の為にとお揃いのヘアピンと色違いのマスコットキーホルダーを三人に付けさせるという念の入れ様。
事前に仕込んでおいたGPSで三人の居場所を把握するためだ。

普段は本宅に顔を出さない構成員で小春の護衛させている。
護衛の他には、ヤキ入れ(仕置き)や証拠を隠滅する『消し』と言われる専門と、情報収集やターゲットを誘き寄せる『釣り』と言われる専門の者がいる。

本家と言われる桐生組の本宅に出入りする組員はどうしても面が割れ、情報も入手しやすい。
だからこそ、影の要員として桐生組でもある程度の人員を動かしている。

とはいえ、本来の極道を解体させたような桐生組では、未だに違法な取引をしている傘下の組の者を処罰するための組織として成り立っている。

数か月前にあった傘下の組同士の抗争も、本家に気に入られたいがために起きたような小競り合い。
桐生組では喧嘩をする時はステゴロ(素手の喧嘩)と決まっている。
ドス(短刀)道具(拳銃)を使ってするのは御法度になっていて、日本では銃刀法違反だからだ。

なのに、言い合いや殴り合いでは収まらず、傘下の組同士がドスや金属バットなどを持ち出し乱闘騒ぎを起こした。
警察沙汰になれば、桐生組が責任を負うことになるため、仁や鉄が手打ち(和解)のために体を張ったのだ。

これが入学式の少し前の出来事である。