姐さんって、呼ばないで



「こんばんは~、お邪魔しまーす」
「いらっしゃい、小春ちゃん」

十八時半すぎ。
組の人が迎えに来てくれて、桐生組本宅の玄関をくぐった。

仁さんは仕事で出掛けているらしく、ママさんと数名の組員さんが出迎えてくれた。

「小春ちゃんの荷物は離れに」
「へい」
「小春ちゃんはこっちね」

花柄のロングスカートが凄く上品で似合っているママさん。
私の荷物を組の人に任せ、ママさんと一緒に奥のお座敷へと。

「うわぁっ!凄いですね!!」
「本番は明日の夜なんだけど、部屋が広いから今のうちから準備しておかないと間に合わないしね」
「手伝います!!」
「そう言ってくれると思ったわ」

記憶を失っていることになっている私は、いつもの宴会場である大広間の中を見渡す。
部屋のあちこちに飾り付けがされていて、二年ぶりの光景に胸が高鳴った。

「このスプレー使っていいんですか?」
「いいわよ~。安、手伝ってあげて」
「へい、姐さん」

赤い髪がトレードマークの安さん。

障子を開けた状態で、窓ガラスにスプレーを噴射し、デコレーションする。
雪化粧みたいで凄く気分も盛り上がる。

「姐さん、上手いっすね」
「こういうのは好きなんですよね」

去年は出来なかったけれど、小さい頃からこういうイベント事の度に目一杯楽しんで来た。
『子供だからコレはダメ』という縛りがないのが桐生組のいいところ。
多少の危ないようなことでも、ママさんはのびのびと見守ってくれた。

「小春ちゃん、それ終わったらご飯にしましょ」
「はーい」