姐さんって、呼ばないで


俺の背中にしがみつく小春。

今さらだけど、一年前に隠したことを悔いているのか。
それとも、今になって知られたことが恥ずかしいのか。
こんな風に俺に知られて、顔向けできないと動揺しているのか。
怒り狂った俺が、今すぐここから飛び出して行きそうで怖いのか。
もしかしたら、再び『距離を置きたい』と言いたくて黙っているのか。

振り返るのも、声をかけるのも怖い。
正直『別れたい』と言われそうで、心臓がヤバいほど早鐘を打ってる。
理由は何にしろ、俺が動揺してんのは、背中越しの小春にも伝わっているはず。

「小春、一旦座ろうか」

彼女の腕を振り解いて、ベッドに座らせる。
膝の上に置かれた手はぎゅっと握り締められていて、視線すら合わない。

「別れるつもりも、許婚を解消するつもりも毛頭ないからな」
「っ……」
「それと、大体の見当はつけてるし、手も打ってあるから安心しろ」
「へ?」
「俺が何もしないでいると思うか?」
「……ううん」
「だろ?」

と小春に言ったものの。
本当のところは、手詰まり気味だった。

だけど、これがあれば、炙り出すことも誘き寄せることもできる。

小春がジョーカーを隠し持ってたとはな。
やっぱり、お前は最高だよ。

「離れるつもりはないけど、一応、ケリがつくまで記憶を失ってることにしとこうか」
「え?」
「表向きの話しな?俺は鉄にしか言ってないし、小春もどうせ親と栗原くらいにしか言ってないんだろ?」
「……ん」
「だったら、今まで通りの方が都合がいい」
「……そうだね」
「だからといって、逢えないわけじゃねぇから」
「ん」