太陽は、極道の者にとってタマと同じ、愛する者を示す。
シールは、桐生組の本宅に出入りしているものなら、誰でも目にしたことのある青白く蛍光する薔薇のシール。
屋敷内が意外と複雑で、純和風建築だから照明が結構暗めなのだ。
だから、幼い頃から泊まりに来ていた小春が、夜中起きた時に迷子にならないように俺があちこちに付けたものだ。
そして鼓は、桐生組の組員なら一度は足を踏み入れる店。
盃を交わした夜は、必ず鼓で酒を酌み交わすのが習わし。
この三つの暗号を紐解くと、俺もしくは若頭という座布団のことを示していて、それを小春を使って警告してるのだと捉えた。
俺の座を狙っている内部の人間。
思い当たるのは三人。
一人目は、『毒蜘蛛』と言われる親父の右腕、宗さん(宗一郎)。
昔気質な五十代で、他の組の奴らからも一目置かれている存在。
けれど、今は無毒と思われるくらい温厚で、料理好きな宗さんはうちの料理長とも言える存在。
二人目は、桐生組の帳簿管理の一切を任されている男、井口。
下の名前で呼ぶのが多い中、数少ない苗字呼びの組員で、不動産会社と土木建築会社の経理書類なども管理する男。
大手の銀行に二十年以上勤務した経歴を持ち、宅建や会計士の資格も保有する極道界では珍しいインテリ系の存在。
三人目は、遊び人の弦さん。
男前の風貌で酒が強く、女遊びもよくしている男。
一見柔らかい物腰だから、何を考えているのか分からない時があるが、忠義は厚く、今まで組の決め事を破ったことは一度もない。
疑い始めればキリがないが、この三人以外は謀りごとをしたとしても、すぐ捲れるだろう。



