姐さんって、呼ばないで



「もしもし、小春?」
「仕事中?」
「……あ、ん」
「そうだよね。ごめんね、邪魔して」
「いや、それは構わないけど。どした?」

学校を出て、ものの二時間ほどで『逢いたい』メールが送られて来た。
記憶を失っていた時はもちろんのこと、それ以前にだって、こんな風に唐突に甘えてくるような彼女じゃないのに。

スピーカー越しの声が少し震えている気がして、余計に気になってしまう。

「今、どこ?」
「……家だけど」
「じゃあ、十五分だけ待ってろ」
「へ?」
「今から行くから、誰も家に上げんなよ」
「……ん」

胸騒ぎがして、仕事をしてる場合じゃないと思った。

一年前。
事故に遭う前の彼女は、俺の知ってる小春とは違い、まるで別人のようだった。
あの時の声に似ている気がして、どうしてもじっとしていられない。

嫌な記憶も思い出したに違いないし、あの時と同じでまた俺に隠そうとするはず。
だからこそ、二度と同じ過ちはおかしたくない。

小春に、一人だけで考えさせてはいけないんだ。

(わり)ぃ、ちょっと出て来る」
「はい?」

秘書の黒川の肩をポンと叩き、小春の家へと向かった。



「俺だ。近くでシキ張りしてる奴はいるか?」

小春の家へと向かう車内で確認の電話を入れる。

「そうか。そのまま気を抜くな」

今のところ、目立った動きななさそうだ。
何が目的なのか、未だに分からないが、あの紙爆弾は『若頭』の俺を意味してると踏んでいる。

『太陽・シール・鼓』