三通目からも、何を意味しているのか、何が言いたいのか全く分からないようなメモや写真ばかりで。
別に脅迫されているとか、よくあるカッターの刃が入っているとか、誰かの髪の毛が入っているとかいうものではなくて。
若頭の恋人だから、他の組からの嫌がらせなのかと思って、下手に反応することは危険だと思った。
仁くんに心配かけたくなかったし、組のみんなを危険に晒すこともしたくなかった。
けれど、十五通目の封書の中に、初めて直筆の紙が入っていた。
『お前は桐生組にはそぐわない』
ずっと組外部からの嫌がらせだと思っていた私は、頭を殴られたようなショックが全身を貫いた。
桐生組の人が、私を若頭の相手に相応しくないと判断した反応なのだと。
だからといって、黙って全てを受け容れるつもりは毛頭なかったんだけれど。
十六通目の封書には、住所の書かれたメモと共に鍵が入っていた。
その鍵はコインロッカーの鍵で、中には大金の入った紙袋があった。
手切れ金と思われるお金。
誰がしたのか分からなくても、大金を積んででも切りたいと願う人がいるという事実が受け止めきれなくて。
誰かに見つかるかもしれないと思いながらも、鍵を差したまま、お金をロッカーの中に残し、その場を後にした。
最後の封書。
『電話に出ろ』と書かれたメモが入っていて、その晩に私のスマホに非通知の電話がかかって来た。
『奴を殺されたくなかったら、奴から離れろ』
通話を録音したが、機械で音声が変えられていて、相手が男なのか、女なのかすら分からず。
結局、そのあとすぐに事故に遭い、スマホも壊れてしまった。
……今修理に出しているそれが、どこまで復元されているのか。
脅迫めいた封書はどれも、同じ香水の匂いがしていた―――



