少し前に車の免許を取った俺は、あの日、小春をドライブデートに誘った。
昼夜逆転生活を送る俺と、カタギ(一般人)の小春とでは生活リズムが違いすぎて、デートらしいデートを殆どしたことがなかったから。
紅葉シーズンということもあって、少し遠出をしてゆっくり過ごそうと思って。

隣県にある有名な紅葉スポットを観光し、食事をして帰路に着いていた俺の車が何者かにつけられていた。
それまでもつけられることなんてちょっちゅうだったから、さほど気にも留めなかった。

それが、小春の記憶を失うことになるとは。

有名な山道を下った直後、十トントラックがノンブレーキで突っ込んで来た。
事故調査では居眠りだと断定されたが、俺は確信してる。
正面衝突を回避するために、ハンドルを切った直後に見た運転手の顔を。
あれは、完全に俺らを狙った目だった。

小春の命があるだけありがたい。
あの事故で彼女を失ったりでもしたら、一生自分が許せない。

怪我を負わせてしまったことへの罪悪感はもちろんある。
けれどそれ以上に、反目()の存在を蔑ろにしたことが悔やみきれない。

退院後にありとあらゆる情報を収集した。
敵対する組が狙ったという情報。
組内部の人間が狙ったという情報。
同業者が仕組んだという情報まで。

火種が多すぎて、どれが本命なのか分からなかった。
ただ言えることは、少し前から小春の様子がおかしかったということだ。

だからこうして、なりふり構わず彼女の身の安全を守ると決めた。