それからの俺らは、答え合わせをするかのように想い出を語り合った。
すごろくで俺が先にゴールするのが悔しくて、急にお腹が痛いと言い出したこととか。
両家で行った旅行先で、さすがに小学校高学年になった俺が『一緒に風呂は入れない』と言ったことで、臍が曲がったこととか。
本当に他愛ない想い出の数々に、積み上げて来た信頼関係が修復されてゆくようで。
何とも言えない幸福感に満たされる。
「レモンティー、もう一杯飲むか?」
「うんっ!」
キッチンにお湯を沸かしに行こうと立ち上がると、彼女も立ち上がって俺の後をついて来る。
懐かしいな、この感覚。
どこに行くにも俺の後をついて来て、キラッキラの瞳で宝物探しするみたいな期待感を俺に向けて来てたな。
電気ポットに浄水器の水を入れていると、背後からぎゅっと抱きついて来た。
「仁くん」
「……ん?」
「私が記憶を失ったって聞いて、悲しかった?」
「そりゃあな。けど、あんな凄い事故の後だったから、生きていてくれるだけで有難いと思ったよ」
「……そっか」
記憶を思い出したということは、『許婚の関係を解消したい』『少し距離を置きたい』と言ったことも思い出したということ。
そこの部分だけ器用に抜け落ちるだなんて考えられない。
今、聞くべきか。
それとも、彼女から言ってくるのを待つべきか。
はたまた、俺らを尾行する奴らの正体を先に突き止めるべきか。
背中に小春の感触を感じながら、腹の奥で不安と焦りが交差する。
「あっ、そうだ!!」
「……ん?」
何かを思い出した彼女は、さっきいた場所へと駆けて行った。



