「琴音ー」
教室のドアのほう。
突然聞こえた声に、あたしと琴音だけが振り返る。
みんなおしゃべりに夢中?
立ち上がった琴音に続いて、あたしもついでに帰ろうとした…とき。
(……げ)
思わず顔をしかめる。
完全に忘れてた。
頭から抜けてた。
ドアの付近に立つ育吹。
…そのうしろに、今朝も見た顔。
なんか喋ってるし。
まさか、育吹とヒヨ、仲良くなっちゃったの?
…うそでしょ。
頭によぎる絶望の2文字。
出来るだけ関わりたくないのに…!!
立ったまましばらく硬直してたあたしの目の前で、琴音がふりふりと手を振る。
「大丈夫〜? 意識ある?」
「…気失ってたわけじゃないよ」
ただ、この先の高校生活がとてつもなく不安になってただけだよ。



