【完】子犬なんかじゃないから、いただきます。






「最近、爽やか王子って呼ばれてるもんね」





そうだったんだ。
すごいね? 葵。




爽やか…ねぇ。
中学のときのことを思い返すと、やっぱり信じられないよね。




一年のときなんかずーっと口の端切れてたし。



不意に顔見るといつも不機嫌そうでね。
むっすーってしてるんだよ。




学校が相当面白くなかったんだろうね。




今の葵もだいぶ好きだけど、あの頃の葵も久しぶりに見てみたいなぁ。





「羽依、見つめすぎだから」


「へへ。ごめん」





葵に怒られた。
ちょっと懐かしい気持ちに浸ってたの。




そんなとき。
体育館のアナウンス、再び。





『ただいまより1年5組と1年6組のバレーの試合を始めます』





あたし、立ち上がりざまに葵の頭をよしよし。
お利口なワンちゃん、いい子で待っててね。





「…羽依!」


「怒んないのー、いってくるね」





でも知ってる。
照れてるだけなんだよね、葵。



ほんと、かわいいんだから。