「楽しかった?」
「うん。…でも、城田が敵だったらもっと楽しかったな」
あはは、って笑って流しとくね。
言っとくけどヒヨ、そんな嫌な奴じゃないよ。
まぁ、あたしが初恋の人だとか言ったからだろうなぁ。
「もうすぐ羽依たちの番だね」
「あ、ほんと?」
琴音帰ってきてないけど…。
あたりをキョロキョロ見渡すと、ちょうど体育館に入ってきた琴音と育吹。
目が合ったからぶんぶんと手を振ってふたりを呼ぶ。
「間に合った?」
「ギリギリ」
「セーフだ」
にこにこ。嬉しそうな琴音。
よかったね。
「あ、8組の爽やか王子」
「……王子?」
琴音が葵を覗き込みながら言う。
葵は予想外の呼び名に、不振がりながら聞き返してる。



