【完】子犬なんかじゃないから、いただきます。





彼を超える人、だーれもいなかった。
…だから、忘れたくても忘れらんなかった。




それなのに、なんでこんなタイミングで再登場? 誰も求めてないってば。





「羽依ちゃんご機嫌ななめ〜?」





はぁ…とため息をつくあたしに声をかけてきたのは、中学3年間嫌という程隣にいた友人。
否、親友。




あたしを『羽依ちゃん』と呼ぶ声はほんわかしていて、あたしより少し短めな黒髪セミロングが揺れる。




見た目、ふわふわ女子。
でもね、見た目だけじゃないと思うよ。たぶんね。





「ちょっと悪夢を…」


「でも夢って、起きた瞬間に自分が捏造した作り話らしいよ」


「……」




この親友、藤堂琴音(トウドウ コトネ)は時々ズレている。