「さすがに顔も見たことないのはナシかも」
「えー? 羽依ちゃん、このまえ喋ってたよ」
「…山田くん?」
「そうそう」
そうなの?
いつの間に?
…ダメ、全然思い出せない。
「廊下で拾ったペンケース拾ったじゃん」
「あー」
「あれが山田くんだよ」
「…じゃあ、まさかあれで惚れられたってこと?」
「そうでしょ」
あんな一瞬で?
名前とか聞く暇もなかったよ?
人間っていつ恋に落ちるかわかんないよね。
「それでもナシ?」
「うーん、思い出したうえで付き合おうってならないなら、ナシかも」
琴音、引いてる?
引かないで。真っ当な意見を出したつもりだよ。



