「無事家着いたら連絡しろよ」
「…一階しか違わないのに?」
マンションのエントランス。
正論を言ったはずなのに、「ロマンのないこというなよ」って怒られた。
「彼氏面させろよな」
拗ねてる。
…なんで? 彼氏面したいの?
変なの。
あたし、喜んじゃうよ。ダメだよ。
8階でエレベーター止まった。
ウィーンってドアが開いて、さっさと降りていくヒヨ。
あーあ、ちょっと寂しいかも。
「じゃ、またな」
でも。
最後振り返ってくれたからね、文句言わない。
バイバイ。
ひらひら手を振って、一階分だけエレベーターでのぼる。
ここに来るまでに食べきったアイス、ゴミだけが手元に残った。
玄関のドアノブに手をかけたとき、スマホから通知音が鳴る。
【ちゃんと帰れた?】
ヒヨから。
…意外と心配症?
ちょっと頬が緩む。
玄関に入って鍵を閉めたあと。
【いま帰宅】
とだけ送って、靴を脱いだ。
ヒヨの連絡先…ゲット、しちゃった。