「……ダメなん」
「ううん。うれしー」
エレベーターのボタン、ぽち。
一階に止まりっぱなしだったからすぐ開いてくれた。
「じゃあ、今から会いに行っていい?」
そう聞きながら、8階のボタンだけ押す。
9階に帰るのは、もうちょっと後になりそう。
「はぁ…もう来る気満々じゃん」
「うん、ダメかなぁ?」
「いや、いいんじゃね。うちの親ラフだし、暇そうにしてたし」
じゃあよし。
久しぶりのヒヨパパとヒヨママ、楽しみだなぁ。
あたしのこと覚えててくれただけでも感動ものだよ。
「羽依こそ、家のことはいいのかよ」
「あたし、ほとんどなんにもしてなかったし。お母さんがしっかり者だから大丈夫だよー」
きっとね。
知らないけどね、真実は。



