「別に言いたくないならムリに聞かないけどさぁ」
うん。
言いたくない。
…ヒヨに、知られたくないんだよね。
葵に告白されたこと。
そして、それを振ったこと。
後ろめたい気持ちなんかどこにもないはずなのに。
…うーん、嘘。
相手が葵だから、ちょっとだけ後ろめたいのかもね。
「じゃあせめて、俺の前では笑っててよ」
エントランスの出口までせっせと歩いてたあたし。
もうひとつの足音、消えた。
うしろから言われて振り返る。
…うん。
あたし、笑顔が似合うよね。
にぃって口角を持ち上げてヒヨを見上げる。
「あたりまえでしょ」



