「なにぼーっとしてんの」
ハッと顔を上げると、目の前には電柱。
…ぶつかりそうになったの、助けてくれたんだ。
優しいところも、変わってない。
あたしが大好きだったあの頃のまま。
「か、考え事…してた」
「ふーん…俺といるのに?」
“俺”…。
そりゃ当たり前なんだけど。
幼稚園の頃は“ぼく”だったから、違和感。
ていうか、声低くなってる。
性格やあたしの名前を呼ぶ暖かさは変わってないのに、あたしの知ってるヒヨじゃないみたい。
「なにいってんの…」
顔見れなくて、そらした。
地面を見ながら歩く。
あたしの黒いローファーと、ヒヨのグレーのスニーカー。



