「…別に。どうせ帰る場所同じだし」
何を思ったのか、ほんのすこし口角を持ち上げるヒヨを視界の隅に捉え。
「それと、あたしは“お前”じゃない」
気に食わないから、ツンとしたまま言った。
だけどヒヨ、全然気にしてないみたい。
「なんて呼んでほしーの」
…知るか!
悪態をつきたくなったけど、ここは学校だし、ぐっ…とこらえて、息を吸う。
「……羽依って名前がある、ので」
そっぽを向きながらそう言うあたしに、ヒヨはふっと笑って見せた。
なんだか恥ずかしくて、直視できない。
…やっぱり、まだ好きなのかなぁ。
忘れつつあると思ってたんだけど。
「知ってる。…羽依は羽依だよな」
なんて、意味深な言葉を言うだけ言って、ヒヨはさっさと歩き出した。
…マイペースなのは、変わってない。



